京都新聞 2022年8月2日 6:00
「救急車に道を譲ってくれない車が増えた」-。救急隊員の訴えとみられる投稿が6月にツイッター上で拡散され、全国的にドライバーのモラルが改めて話題になっている。京都市でも、車両や歩行者が道を譲らない事例は中心部の大きな交差点などで特に多いといい、市消防局の隊員は「一刻も早い患者の搬送が任務なので非常につらい。進路の確保に協力してほしい」と呼びかける。
冒頭のツイッター投稿は「いいね」が約44万件と大きな反響を呼び、「母の救急搬送中、車も歩行者もなかなか道を譲ってくれなくて祈るような気持ちでした」「自分の事しか興味ない人が増えているのかな」と共感の声が寄せられていた。
京都市内ではどうか。「特に交通量の多い交差点では、一部の車が道を譲ってくれないケースがある。歩行者の中にも、急いでいるのか立ち止まらずに横断歩道を渡ってしまう人がいる」。市消防局の救急管理係長の男性(45)は、10年以上にわたる救急隊員としての経験を振り返る。2種類のサイレンに加えて「交差点に進入します」とアナウンスしても、聞こえてないかのように無反応の車もあるという。
道路交通法では緊急車両が接近してきた場合、車両は道路の左側に寄るなどし、進路を譲るよう定められている。サイレンの音が聞こえたらすぐに緊急車両の位置を把握し、交差点の場合は手前で一時停止するのが正しい対処だが、男性係長は「近年は車自体の防音性能が良くなり、音に気づかない人もいるのかもしれない」と推測する。ただ、現在の音量でも市民から「音が大きい」というクレームが寄せられることがあり、これ以上音量を上げるのは難しいという。
今年は新型コロナウイルス患者や熱中症などの影響で、救急車の出動要請が非常に多い状況が続いている。市内における1~6月の出動件数は4万5547件と、前年同期比18.8%増となった。
男性係長は「呼吸や脈拍が止まり、病院でしか根本治療できない患者を搬送していることもある。いろいろな事情はあるかと思うが、一刻一秒を争うので道を譲ってほしい」と力を込めた。
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