今年も冬になって風邪が流行するようになりました。
この風邪・・・急性咽頭炎の原因となる病原体として多いのは、ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルスなどのウィルスです。
ちょっと薬に強い方は知っていますが、抗生物質は細菌には有効ですが、ウィルスには全く効果がありません。
なので、急性咽頭炎のほとんどの病原体に対して、抗生物質は必要ないのです。
残念ながらこれらのウィルスに対して有効な薬剤はまだ開発されていません。
したがって、咽頭炎の時には、対症療法・・・今ある不快な症状を抑え込む薬を使用する・・・を行うのが普通です。
でも、これって治す治療ではありませんので、薬を服用しようが、止めようが、完治まで4日かかるものは4日かかることになります。
むしろ服薬に一生懸命になるより、しっかり水分を摂取してゆっくり睡眠をとる・・・これが一番の治療法です。
例外があります。
子供達に流行することが多い、溶連菌感染による咽頭炎です。
見てわかるように、溶連菌は細菌です。
なので抗生物質が効くのです。
米小児科学会(AAP)、米疾病対策センター(CDC)、米感染症学会(IDSA)は、溶連菌に用いる抗生物質として、ペニシリン、アモキシシリン、エリスロマイシン(ペニシリンアレルギーの患者向け)、第1世代のセファロスポリンを推奨しています。
日本の小児科や内科がよく処方するような、第3世代のセファロスポリン系抗生物質(セフゾン、メイアクト、トミロン、バナン、フロモックスなど・・最近はジェネリック薬で〇〇○ピボキシルとかセフジニルとか)は処方すべきではないとされています。
また、不要な抗生物質の使用を抑制するため、処方に先駆けた溶連菌検査の実施を勧めています。
さて、『咳が出るから貼り薬をください』という親御さんがよくいらっしゃいます。
ここで言う「咳止めのテープ」とは、ツロブテロールのテープ剤(商品名:ホクナリンテープほか)のこと。
医師からこのような説明を受けて処方されているケースが多いためか、子供を持つ親の間では、この呼び名が口コミで広まっているようです。
親としては、なかなか飲んでくれない飲み薬よりも、張っておくだけで済むテープ剤は使い勝手がよいので、結果として医師へのリクエストも増え、「咳の出る子供にやたら処方されている」現状があります。
ツロブテロールのテープ剤の適応は「気管支喘息、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫」。
そもそも、徐放性のβ2刺激薬であり、気管支拡張作用によって呼吸を楽にすることはできても、咳を止める作用はありません。
副作用として、手の振るえや動悸などの報告もあります。
抗生物質もツロブテロールテープも、診察した医師としては、肺炎や気管支炎の見逃しの可能性を恐れて、つい処方してしまうのでしょうが、親御さんには正しく説明して欲しいものです。
『ただの風邪だと思うけど、肺炎の可能性が否定できないので、念のため抗生物質も出しますね』とか、『喘息の可能性が否定できないので気管支を広げる貼り薬も出します』とか・・・
決して、風邪が抗生物質で改善することはなく、貼り薬で風邪の咳が止まる訳でもないのです。
ご注意を・・・!!!
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