悲しい・・救急医療

末期肺癌の方が、呼吸の苦しみに耐えられず、自殺しようと思いたって、埼玉県北部に行き首を吊りました。

幸い(?)・・いや、不幸なことに(?)ヒモが切れてしまい死ねませんでした。

当てもなく歩いていて、呼吸が苦しくなり、道でうずくまっているところを通行人に119され、救急車が出動したそうです。

 

救急隊はかかりつけ病院に収容要請をしましたが、『自殺を企てるような人は精神的に問題があるから精神科受診が先だ』と断りました。

近隣の救急指定病院の多くが、同様の理由で収容を拒否。

仕方なく、埼玉県が誇る『精神科救急医療システム』に連絡しました。

精神科救急情報センターの回答は、『呼吸を苦しがっているならそっちを先に診てもらえ』でした。

その後も収容先が決まらず、地域の3次救急を担っている大学病院にお伺いをたてたところ、かかりつけ病院が週明けに引き取ってくれるなら土日の間は収容可能・・という返事をいただけたそうです。

しかし、かかりつけ病院は『それは確約できない』と突っぱねました。

 

自殺を企てる人間は精神疾患・・・たしかに精神的に病んでいる状態でしょう。

でも末期癌の患者さんの気持ちも思いやれない医療って何なのでしょう?

むしろ、『末期じゃあ救急医療の適応じゃあないな。かかりつけ病院が診るべきでしょう』っていう断り方の方が正しい気がします。

 

結局17件目の収容要請で我がクリニックに約1時間かけて搬送されて来ました。

精神的に病んでるのは、埼玉県の医療従事者たちなのではないか?と悲しくなるような出来事でした。

 

 

 

 

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コメント: 16
  • #1

    nyar! (日曜日, 26 1月 2014 12:26)

    悲しい出来事でしたね。
    もう皆さんどこを向いて何に向かって仕事をしているのか...
    切羽詰まった患者さんに手を尽くす。臨床の経験値が上がるほど、社会経験を重ねるごとに、救急医の切れ味は鋭くなっていきます。
    ただそれに体力面での限界を感じる場面が出てくるのも避けられぬことですけど。
    日々前向きに頑張りましょう。
    明日はきっとうまくいく!っす。

  • #2

    nyar! (日曜日, 26 1月 2014 12:39)

    連投失礼
    組織の人間なら、ましてや大きな組織なら当たり前の返答。
    先方の考え方も、背景も事情もちゃんとわかってる。
    救急隊のかゆいところ、痛いところにも気づいてる。
    みんな神様なんかじゃない。
    でも!
    「きょうの俺、がんばったな... でも、川越のセンセにゃかなわんな」っす。

  • #3

    EMT (日曜日, 26 1月 2014 13:59)

    初投稿させて頂きます。某消防本部の救急隊員です。そういった状況だと確かに苦慮しますね…自分の記録!?と言っていいものかわかりませんが、50件ぐらい断りがありました。その方はホームレスで低体温、吐血もしていました。社会的弱者だとは思うんですが、病院は冷たかったですね…ちょうど0時ぐらいに呼ばれて帰る頃にはすっかり朝でした…

  • #4

    院長 (日曜日, 26 1月 2014 16:03)

    nyar!さん・・・そうなんですよ。組織にいると杓子定規な対応になりますね。でも1人くらい良い道を考えて欲しかったです。3次の先生が条件付で良いよ・・と言ってくれたことが救いです。結局、別れた妻が連れて帰りました。Ns.や学生と話をしているときは呼吸苦訴えません。一人になると苦しく感じるようです。精神的なfollow必要です。明日、先方の市役所の福祉課に連絡取ります。ケアマネが動いてもらえることを祈って・・・
    EMTさん・・・・ん〜、その症例だと冷たいでしょうね。特に夜間は行政も全く対応してくれません。受け入れたとしても保険無い、お金無いなら医療も出来ません。病院に居着かれても困りますしね・・・引き取り手が確保できるなら収容しますが・・・・
    警察が現場で、怪我や病気を見つけたらすぐに救急車を呼ぶように、ホームレスや福祉が必要そうな傷病者の場合すぐに行政に連絡が行くシステムを確立することが必要だと思うのですけどね〜・・・どこかの行政が始めたら真似するところが増えると思うよ。だって医療機関は身元引き受けを行政がしてくれれば取るもん。

  • #5

    nyar! (月曜日, 27 1月 2014 12:42)

    医学生、インターンの諸君!
    医療の現実に失望しそうになったら、上原先生のところで一晩、現場見学(無給の手足ともいう)してみるとイイ!かも。
    ナースをはじめ、コメディカルの皆さん!
    ルーチンワークと管理業務で心が折れそうなとき、ハードな現場に立ち会うと「本当の」自分と向き合えるかも。
    自分は血を見るのも怖かったけど、交通事故で血まみれの患者さんが運ばれてきて、「この人を助けたい」って思ったとき、乗り越えていました。
    ハードな現場はプロをタフにしますよね。上原先生。

  • #6

    おじゃるまる (月曜日, 27 1月 2014 15:26)

    私はまったく医療とは関係ない一般人です。
    一般人から単純に見ると「なんてひどいたらい回し」としか見えません。
    現場の先生や、病院の側から言えばそれなりの言い分もあるのでしょう。
    でも、患者はもちろん、現場にいる救急隊に負担を押しつけて
    ドクターが患者を診なくていい理由になるのでしょうか?

    自殺と末期ガンなんて、簡単な事例だなんて思っていませんが
    誰かドクターが診て欲しかった。
    どんな人にでも医療ができるのはドクターだけなのですから。

    でも、どんな状況のどんな患者が運ばれてくるかわからない
    そんな状況を救急で受け入れる先生方は並大抵の苦労でないと思っています。
    受け入れなければ受入拒否と非難され、受け入れて何かあれば医療事故と騒がれる。
    あとは先生方の「良心」だけでなんとかしろと言うのはやっぱり違うと思います。

    初期受入と転送のシステムなど、行政や法律なども含めてシステム自体を
    変えないとこの状況はいつまでも続いていくような気がしてなりません。
    ましてや、搬送先が見つかるまでずっと現場を動けない救急隊は
    彼らが大変なだけでなく、他の救急搬送が必要な人のためにも動けないという
    状況を生んでいます。

    妙案があるわけでもなく、医療に参加できるわけでもない素人が
    コメントすることに抵抗もありますが、あえて書かせてもらいました。

    上原先生の話をいろいろじっくり聞きたいところですが、
    本当にお忙しい先生と茶飲み話するわけにもいきませんから
    今後もブログを拝見することにします。
    長文にて失礼しました。

  • #7

    場末の医師 (月曜日, 27 1月 2014 20:21)

    正直、先生の御活動はすごいと思う反面複雑です。
    というのは、これで救急が個人の努力でなんとかなると行政が勘違いしてしまうのではないかと思うからです。
    あくまでも、根本的な解決策は十分な予算と人員にあるからです。
    また、混んでないから時間外にくる患者。救急車をタクシー代わりに使う患者への厳罰も必要でしょう。
    報道も先生が素晴らしいという点に終始している点でだめだめだと思います。

  • #8

    (火曜日, 28 1月 2014 03:54)

    私も場末の医師様の意見に賛同いたします。

    このクリニックがヒーロー的に映るだけでは、何も変わらないです。
    ただし、あまりに過激な報道だと炎上すると思われますので、ディレクターさん的には板挟み状態だったのが推察されます。

    が、もう少し問題点を抽出し、強調して放映されても良かったのかな、と感じました。

  • #9

    nyar! (火曜日, 28 1月 2014 11:59)

    9時5時の、ふつうのお医者さんには違和感あるでしょうね。
    > 混んでないから時間外にくる患者
    川越救急さんの待合室見たら、患者さんも医師だって考えが変わりますよ。
    ヒマして見えるからナメられる。そんな気がします。
    > 救急車をタクシー代わりに使う患者への厳罰も必要でしょう
    27日のスーパーJチャンネル見てますか?
    タクシー代わりといっても事情は様々。
    その一方で、医師が取るべきスタンスは明らかです。(お手本でした)

  • #10

    プリン職人 (火曜日, 28 1月 2014 12:19)

    患者さん、救急隊員、医療従事者、病院経営者、行政、それぞれの思惑や事情が平行線である事が、問題の根底にある気がします。それから臭いものに蓋をしようとしている人も。ただ川越救急クリニックから、こうした意見交換、議論の場が生まれている事に感動を覚えます。

  • #11

    院長 (水曜日, 29 1月 2014 00:06)

    場末の医師さん・・・貴重なご意見ありがとうございます。おそらく現場に出ているお医者様の大半が先生と同様のご意見をお持ちだと思います。M3のアンケートでも、救急医療を崩壊させる原因は何だと思いますか?という問いに対し、医師の中で最も多かった意見は「コンビニ受診」でした。
    また、十分な予算がないから・・人員がいないから・・よく聞く言い訳です。じゃあ、十分な予算がどこに取られていて、医療界がどう対応しているか考えたことがありますでしょうか?例えば輪番制に名を連ねている病院。助成金だけ取るだけ取って、実際にはほとんど救急車を取っていない施設が山ほどあります。医療側には責任ないですか?
    適正な予算を獲得するための努力があったのでしょうか?
    いまだに「お医者さんのほとんどは金儲けのためにやっている・・・」って信じてる方が多いのはなぜでしょう?
    医療界は行政や一般の人たちが、ここの施設なら助成金や税金を使っても仕方ない・・と思える活動をアピールしてきたでしょうか?
    たまたま我がクリニックはマスコミが取り上げてくれました。そして行政も民意に押される形で認めてくれた。じゃあ、なぜ医療界はいままでこういう活動ができなかったのか?いや、してきましたよね?休日夜間診療所。救急告示、輪番病院。それがなぜ世間にアピールできなかったのか?考えた人がいたでしょうか?
    私は考えました。サービス業として医療界は未熟すぎる・・というのが私の結論です。そして混んでないから夜間に来る患者さんが大病院の外来を受診しないように・・コンビニ受診は我がクリニックで引き受けます。コンビニ受診や時間外の軽傷者の受診を無くすなんて無理ですよ。交通事故を無くしましょう!っていうスローガンと同じです。現代の社会構造上、絶対無理です。じゃあ、それにうまく対応する必要があると思うわけです。いつまでも医療界の常識に従わない患者を「悪だ!」と言ってても仕方ないです。医療界も変わらなくっちゃ。どんどん世間から取り残されちゃう・・・医療界の常識が世間の非常識になる日も近いのではないかと危惧しています。だからこんな儲からないけど、一般の方からは支持されるクリニックを開いたんです。これをきっかけに、場末の医師さんのような、常識的な医療人の方たちが、今後の医療の在り方を考えるきっかけになってくれたら幸いです。

  • #12

    テンチョー (水曜日, 29 1月 2014 16:23)

    因みに、「nyar!」様は何て読むんですか?発言はごもっともと思います。
    「プリン職人」様、議論の提示ありがとうございます。私も考える所はままあります。
    これからもテンチョー業務に勤しみます。

  • #13

    昔の教え子 (水曜日, 29 1月 2014 23:14)

    なんともコメントが難しい事例ですね。本当にお疲れ様です。
    しかし、埼玉の救急医療はなんとも厳しい状況ですね。

    私の地域も社会的弱者の方や、いろいろな問題の多い社会背景や心理的な問題の
    多い方が多数いる地域ですが、それぞれの病院や診療所や行政が協力しながら
    なんとかやっています。救急だけの問題ではないと思いますが、地域コミュニティや
    行政や診療所など全てを巻き込んでいかないとなかなか解決していかなそうですね・・

    埼玉どうにかしたいな〜と遠くからですが見守っております。

  • #14

    nyar! (木曜日, 30 1月 2014 12:10)

    上原先生、とてもわかりやすかったです。お考え、あらためて腹に落としました。
    やっぱりすごいっす。プロフェッショナルっす。
    下は、私が貼っている標語?です。ご笑納ください。
     「ヒマして見えるとナメられる、よ」
     「Yes スマイル、No! アハハ」
     「引っ込んでると サボって見えるよ 苦しいんだもん」
    テンチョー先生、「にゃあ(っ)」とお読みください。
    これは近所の黒猫クロちゃんが、目が合うと加速してきて飛びかかって来るときの雄叫び。
    なついてくれてかわいいのですが、スラックスはボロボロです (;_;)

  • #15

    nyar! (木曜日, 30 1月 2014 12:37)

    また連投失礼
    こんな記事が。
    ● 開始から4年、「救急医療の東京ルール」は成功したか (日経メディカルWeb)
    http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201401/534826.html
    整形外科的症状、精神科的症状、酩酊状態や住所不定、癌末期、超高齢者への
    取り組みについて書かれています。
    ご存知でしたら失礼

  • #16

    かわもと (月曜日, 03 2月 2014 17:44)

    肺がんは、そんなにも苦しいなんて…。
    いとこ(三十代)が肺がんで亡くなったのですが、余計に可哀そうになりました。