1 聖書(ルカの福音書)
よきサマリア人の法(Good Samaritan Law)とは、聖書にでてくる挿話の一つがもととなった法律です。あるユダヤ人が強盗に襲われ倒れていたところ、人々は見てみぬふりをして 通り過ぎていました。ところが、一人のサマリア人だけはその者を助け介抱し、宿に運んで宿代まで負担したのです。「サマリア人と同じように真の隣人たるべくこのような救助行為を促進するために、法が働きかけるとすると、どうなるか」という試みに始まった立法であるといわれています。
2 アメリカ法
現在、アメリカの全50州およびワシントンDCにおいて「よきサマリア人法」と呼ばれる法律が制定されています。内容は全般的に、応急手当をした市民に対する民事責任を免除する規定になっています。多くの州では、医師がボランティアとして救命行為をした場合を特に規定しています。これは、医師と患者との間には医療契約が締結されるところ、緊急状態などで、患者の契約の締結の意思がわからず、後になって、治療拒否を主張した場合に問題となるため、その際の免責規定の存在が重要になります。このため、医師の免責をはかることに力点がおかれていることが しばしばみられます。
3 日本におけるよきサマリア人の法
明文規定はありませんし、判例上このような行為についての責任軽減、救助義務などを求めるものはありません。
→ 国内の医療者が、救急医療に消極的になっているのは、こんな背景もあるのです。好意から救急患者を診察したら、患者家族の期待に応えるような結果が得られず、訴えられた・・・・一旦、医療訴訟が起きれば、正義:患者側、悪:医療側、という関係です。
その結果、リスク回避のため、ほとんどのお医者さんは救急患者を診たがらなくなったのです。
国内の医療周辺の法的な整備・・・多くは医療サイドの義務や責任を明記し、医療側が遵守しているかのみを問う内容が多くなっています。
まさに規則を作る段階から、『医療界はそろって悪だ』という前提で議論が進んでいきます。
その結果、医療事故は第3者機関に届け出とか、担当医に刑事罰を・・というひどい方向に行っているようです。
結果として、現場の医療をどんどん萎縮させて行っている原因になっていることを早く気づくべきでしょう。
このままだと日本から救急医療が消失します。
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ジャスミン (水曜日, 19 6月 2013 00:33)
さすがアメリカ、そんな法律があるんですか。
危機管理というか、アメリカは「万が一」って類の事態に対応するための訓練とか重視してますもんね。
日本は何かというと、すぐ管理責任ってなるからなぁ…1分でも2分でも長く生きてもらおうと手を尽くした結果、訴訟リスクじゃぁ…さわらぬ神にたたりなし的なコトになりますわな。
医療を受ける側も、提供する側も納得できるってのは、とても難しいことなんですね。
ところで先生は、飛行機とかで「機内にお医者様はいらっしゃいませんか!」って言われて「ハイッ!」って言ったことありますか(興味があって聞いているだけです)。
Shio (水曜日, 19 6月 2013 18:34)
全く同意です。救急における医師の萎縮の根源は其処にあると思う。
日本にもそのような法律作るべきだとずっと思ってた。
法律がなくても日本では上手くやれていたのが、変ってきたのが、
やはり”割り箸事件”からかな~。
診療拒否じゃなくて救急で診察した医師が殺人罪で訴えられたわけだから、
救急の医師は萎縮するよね。
結局無罪にはなったけど、あの時にきちんと法制化を目指すべきだったね。
院長 (金曜日, 21 6月 2013 01:23)
ジャスミンさん・・・こんにちは。ANAからもJALからも感謝記念品でボールペンもらいましたよ。医者の診療報酬的には安いなあ・・とは思いましたが、ま、こっちもボランティアだし・・・どうせなら、その機に搭乗していたスッチー達とのみに行ける権利・・とかの方が嬉しいっす!
Shioさん・・・・そうなのよ。今でも法制化を目指そう!って頑張ってる医療人はいるんだけど、なにぶん司法が動かないんだな。少なくとも法律家で医療を保護しようっていう人は皆無に近いみたいだよ。だから医療界が声を上げて、世論を形成して行かないと絶対法制化は無理だってさ。俺もがんばろうかな・・と思ってこのブログ書いたんだけどね。